1. はじめに
2006年3月20日から新しいタイプのパスポート(IC旅券)の申請受付を開始しています。このパスポートには、これまで以上に偽変造が難しくなるよう様々な工夫を施しますが、一番の特徴はIC(集積回路)を搭載し、国籍や名前、生年月日など旅券面の身分事項のほか、所持人の顔写真を電磁的に記録することです。IC旅券もこれまでと同じように冊子型ですが、冊子中央にICチップ及び通信を行うためのアンテナを格納したカードが組み込まれます。
IC旅券の導入により、顔写真を貼り替えたパスポート等を使用してもICチップに記録されている情報と照合することにより偽造を見破ることが容易となるため、パスポートの偽変造がより困難になります。また、今後、各国の出入国審査等でICチップに記録された顔画像とその旅券を提示した人物の顔を照合する電子機器が段階的に整備されていくことにより、他人によるパスポートの不正使用防止の効果が期待されます。
(IC旅券の導入を規定した改正旅券法は第162回国会で可決され、2005年6月10日に公布されました。)
2. IC旅券導入の背景
近年、パスポートの偽変造や成りすましによる不正使用が増加し、国際的な組織犯罪や不法な出入国に利用されているため、より偽変造が困難で、安全性の高いパスポートとして生体情報認証技術(バイオメトリクス)の応用が研究されてきました。特に2001年の米国同時多発テロ以降は、テロリストによるパスポートの不正使用を防止する観点から国際会議でも活発に議論され、また、米国がビザ免除継続の要件として各国にバイオメトリクスを採用したパスポートの導入を求めたことがこの議論に拍車をかけました。パスポートは自国のみでなく世界中の国々で使用されることから国際的な相互運用性が重要とされ、ICAO(国際民間航空機関)において国際標準化作業が進められました。そしてICAOは、2003年5月、記録媒体として非接触型ICチップを選択し、ICチップに記録する必須の生体情報として「顔画像」を採用(各国の判断で指紋、虹彩を追加的に採用することを認めている。)しました。
我が国が発行するIC旅券の生体情報としては、「顔画像」のみを記録することにしています。
3. パスポート申請の手続
(1) ICチップに記録する顔画像は旅券申請書に貼付された写真から取り込むため、IC旅券が導入されてもパスポートの申請手続はこれまでと変わりません。ただし、提出する写真の規格が変更され、写真自体の大きさは変わりませんが、顔の占める割合が大きくなりました。
(注) これまでの再発給制度(パスポートを紛失等したときに、有効期間をそのまま引き継いだパスポートを発給する制度)は廃止され、紛失一般旅券等届出書の提出後に新規発給されます。
(2) IC旅券が導入されても、現在お持ちのパスポートは有効期間満了まで使用することができますが、非IC旅券からIC旅券への切替を希望される方は、残りの有効期間にかかわらず切替することもできます(通常の旅券発給手数料が必要です)。
4. 米国入国ビザ(査証)との関係
米国がビザ免除継続の要件としてビザ免除対象国(日本を含む27か国)に課したIC旅券導入期限は、当初の期限から1年間延期され2006年10月26日になりました。
具体的には以下のとおりです。
(1) 2006年10月25日までに発行された機械読み取り式パスポートは、ICが搭載されていなくても顔写真がデジタル印刷であればビザが免除されます。我が国の機械読み取り式パスポートの顔写真は全てデジタル印刷となっていますので、2006年10月26日以降もそのパスポートの有効期間中はビザなしで米国に渡航することができます。なお、非機械読み取り式パスポートについては米国査証(入国及び通過)が必要ですのでご注意ください。
(2) 2006年10月26日以降に発行されたパスポートはIC旅券でないとビザが免除されませんが、我が国は同年3月20日以降の申請に対して国内はもとより原則全在外公館でIC旅券を発給しています。
5. IC旅券のセキュリティ対策
ICチップに記録された情報が御本人の気付かない間に読み取られることのないよう、顔写真のある身分事項ページを開かなければICチップ内の情報が読めない安全対策を施します。また、IC旅券と読取機の通信距離は10センチ以内で、かつ、情報は暗号化されていますので、盗聴対策も万全です。
6. 留意事項
(1) IC旅券に格納されているICチップは電子部品です。IC旅券に強い衝撃を加えたり、高温の場所や磁気の強い場所に保管したりすると、ICチップに異常を来す恐れがありますので、取扱いには注意が必要です。
(2) 旅券作成に係る機器の導入及び作動状況等により、IC旅券の作成を東京の外務本省に依頼する場合もありますので、発給までに相当な時間を要する可能性も排除できないところ、ご理解をお願いします。
(3) また、上記(2)の場合で、緊急に旅券の発給が必要となった場合2006年3月20日以降はMRP(機械読み取り式)旅券の発給は行われていませんので、非MRP・非ICの「緊急旅券」又はMRP・非ICの「帰国のための渡航書」の発給となります。
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